セミナーレポート
触覚情報をカメラでとらえる立命館大学 理工学部 ロボティクス学科 教授 下ノ村 和弘
本記事は、国際画像機器展2021にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
>> OplusE 2021年3・4月号(第478号)記事掲載 <<
カメラを用いた触覚画像センサー
一般的に,カメラは視覚のセンサーとして使いますが,触覚の情報をとらえる触覚センサーとしてカメラを使う技術を紹介します。作業をすることを考えると,道具を使ったり,ものに触ったりしますが,その場合には視覚だけでなく,触覚も大事になってきます。例えば,ハンマーで叩く場合には,叩きたい場所にどのくらいの力で叩くかといった触覚の情報が必要になります。また,リンゴの識別の際の硬さや表面の凹凸,印鑑を押す場合の位置や力の具合,お餅をつかむ際の力加減,ボルトを穴に入れる際の位置や姿勢・力加減,物体の表面の傷を見つける際の指先の感覚も大事になります。触覚情報についてカメラを用いて画像として取得するための技術に私たちが用いているのは,触覚画像センサーです。触覚画像センサーは接触物体の位置・姿勢や表面の凹凸テクスチャーを取得でき,マーカー変位から力の推定が可能で,750×750ピクセルの解像度があります。
カメラを用いた触覚センサーの基本的な構造は,センサー面は接触面への物理的接触を光学的な情報に変換するもので,「導光板を用いた方式」,「マーカー変位に基づく方式」,「反射膜を用いた方式」があります。カメラは,センサー面を裏側から撮影します。必要に応じて照明も適切に利用します。最終的に,それらのカメラ画像をコンピューターで解析し,触覚情報を取り出します。
カメラを用いた触覚画像センサーの特長は,1つ目は高い空間分解能にあり,μmオーダーの空間分解能が可能であることです。2つ目は,計測範囲を柔軟に調整できることです。レンズの画角により計測範囲を容易に調整でき,広い範囲の触覚情報を取ることができます。3つ目は,接触センサー面がカメラと物理的に分離しているので,衝撃などによる故障に強く,センサー面部分のみの交換も可能です。4つ目は,コンピュータービジョンのアルゴリズムやツールが利用できることです。最近は深層学習が画像認識によく使われているので,触覚情報を取り出すところにこれらを使うことができます。
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立命館大学 理工学部 ロボティクス学科 教授 下ノ村 和弘
大阪大学 大学院 工学研究科 電子工学専攻博士後期課程修了。博士(工学).2009年立命館大学 理工学部 ロボティクス学科准教授。2018年より同教授。画像センシング技術とロボティクス応用に関する研究に従事。