セミナーレポート

行動解析技術の最前線オムロン(株) 技術・知財本部 研究開発センタ AI制御研究室 主査 高橋 智洋

本記事は、国際画像機器展2021にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。

Unsupervised anomaly detection

 「データに寄せる」を利用した例として,Unsupervised anomaly detect ionと,Unsupervised domain adaptationがあります。
 Unsupervised anomaly detectionは,正常データしかないときに,正常か異常かを見分けるものです。例えば,医療や製造業の外観検査では,正常データが圧倒的に多数だと考えられます。こうした中では,正常データだけから異常を見分けられるようにする技術が必要になります。このような問題に対して,GANを用いたアプローチを紹介していきます。
 この手法は2段階に分かれています。1段階目は学習段階で,2段階目は推論段階です。推論段階では,新しい画像に対して,正常か異常かを見分けていきます。学習段階では,正常データしかないので,正常データのみを使って学習します。このような学習を行うと,Generatorは正常データかそれに近い画像のみしか生成できません。そこで,GANでは,推論段階で正常か異常かを判別したい画像に対して,Generatorが生成できる中で最も近い画像を探索するという最適化問題を解きます。正常画像では近い画像を探索できるので差分は小さくなりますが,異常データでは近い画像がありませんので差分が大きくなり,その大小で判別が可能になります。実用では,OCT画像の結果でも,正常データと異常データを見分けられるようになっています。
 Unsupervised anomaly detectionでは,推論時に最適化問題を解いて探索するのに時間がかかると言われています。そこで,最近の研究例では,「推論時の探索」までを学習しておくようにされています。ニューラルネットワークを工夫して,GAN学習時に同時に探索の方法まで学習するのです。
 OCT画像から始まった分野ですが,現在は,X線手荷物検査画像や時系列データなどいろいろな領域に適用されています。

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オムロン(株) 技術・知財本部 研究開発センタ AI制御研究室 主査 高橋 智洋

2013年京都大学大学院博士後期課程修了。博士(理学)。2011~2013年 日本学術振興会特別研究員(DC2)。大学院では理論宇宙物理学を専攻する。修了後,NTTデータ数理システムにて数理最適化に関する業務に従事。主に大規模離散最適化問題に関して,ソフトウェアの開発や個別コンサルティングを行う。数理最適化と並行し機械学習を独学。前職のABEJAでは画像解析をターゲットとした深層学習の調査や実装に従事。現職のオムロンではロボティクスに関する研究を行っている。

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