セミナーレポート
3次元測定システムの精度評価および不確かさ評価東京大学 名誉教授 高増 潔
本記事は、国際画像機器展2021にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
直交CMMの受入検査と非接触CMMの受入検査
3次元測定機(CMM)による不確かさ評価で基本となるのは,3次元測定機自身の精度です。3次元測定機の精度を評価する受入検査には,JIS B7440シリーズ(ISO 10360シリーズ)があります。直交CMMの誤差評価では,直交型CMMで離散的な接触プロービングが対象になります。これは一般的なCMMに普通のプローブをつけたものです。主な検査項目は,長さ測定誤差と,プロービング誤差です。長さ誤差測定では,JIS B7440-2に基づき,XYZ軸に平行の3方向と対角4方向の7か所,5種類の長さを3回ずつ,合計105回測定します。最大許容指示誤差では,ステップゲージ/ブロックゲージ列を両方向測定します。7か所,5種類の長さを3回ずつ測り,長さ測定誤差が,最大許容長さ測定誤差の中に入ればいいと決まっています。プロービングシステムの精度評価については,接触プロービングシステムの誤差を評価するのがJIS B7440-5です。JISの改正が終わり,新しいものが2022年に発効予定です。プローブの精度検査では,基準球を25点測定します。測定のバラつきが形状誤差となり,求めた球の直径の誤差が寸法誤差,複数のスタイラスで測定した場合の位置の差が位置誤差となります。
最近では,非接触の3次元測定機が増えてきています。非接触CMS(3次元測定システム)の受入検査では,JIS B7440シリーズの第7部から第13部があります。光学式CMSの規格では,直交型CMSに画像プロービングシステムや光学式距離センサーを搭載したものがあります。非直交型CMSでは,レーザートラッカー,X線CT,多関節CMS,光学式座標計測システムなどそれぞれに規格があります。検査は主に球を用い,球の中心距離で寸法測定誤差,球の寸法でプロービング寸法誤差,球の形状でプロービング形状誤差,球の中心位置でプロービング位置誤差を評価します。また,平面を用いることや,ボールアレイなどのアーティファクトを用いることもあります。直交座標測定機+接触プロービング(JIS B7440-2)では双方向で評価していますが,非接触CMSでは,単一方向の評価が中心となります。
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東京大学 名誉教授 高増 潔
1982年 東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻 博士課程修了(工学博士) 1982年 東京大学工学部精密機械工学科 助手 1985年 東京電機大学工学部精密機械工学科 講師 1987年 東京電機大学工学部精密機械工学科 助教授 1990~1991 英国ウォーリック大学 客員研究員 1993年 東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻 助教授 2001年 東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻 教授 2020年 東京大学 名誉教授